2021.8.11葬儀コラム
火葬場で死者が蘇生!? 検証してみました

オリンピックが終わり、いよいよお盆ですね。
先日、墓掃除をしてきましたが、物凄い暑さでした。
盆準備の際は、熱中症の対策も忘れずにです。
前のコラム『いまさら人に聞けないお盆の話』に書きましたが、
お盆とはご先祖様が帰ってくる期間です。
“ご先祖様が帰ってくる”と書くと、なんだかほのぼのしますが、
“死者が帰ってくる”と言うと、一気に怖くなりますね。
盆の時期に怪談番組が増えるのは、そういう訳です。
葬儀における怖い話の中でも、よく取りざたされるのは
【火葬】にまつわる話です。
火葬の直前、あるいは火葬中に死者が蘇る、
そんなお話しです。
耳にしたことがある方も多いかもしれません。
お盆時期の納涼もかねて、
少し怖い話も紹介しつつ、
今回はその真偽を葬儀屋目線で検証してみます。
1.火葬前の死者蘇生を検証
「火葬 生き返る」でググってみると色々な記事が出てきますね。
ググったみた結果
いくつかピックアップしてみますと・・・
死んだはずの妻が生き返った!(パラグアイ)
死亡した男性、火葬の直前に息吹き返す(中国)
↑
亡くなったと思った人が、実は生きており、
火葬前に息を吹き返したというお話ですね。
なぜこのようなことが起きるのかというと、
死亡判断の下し方に問題があるのでしょうね。
記事の解説では、
中国では人が亡くなった場合「医師による死亡診断書の作成」などが求められていない、
とあります。医療事情は各国様々ですね。
試みに外務省のホームページにある各国の医療事情を参照してみます。
公立医療機関は、設備が老朽化していたり、医薬品不足のため、時には自ら医薬品を調達する必要が生じるなど、日本における医療イメージとは異なることもあります。
中国
中国では都市部と農村地域との格差が大きく、農村部では基本的な衛生レベルも維持できない施設もあります。
自ら医療品を調達!
基本的な衛生レベルが維持できない施設!!
うーん、医療が整っていない国では、
死亡判定のルールも厳密ではなさそうです。
医師による「死亡の診断」を厳格に義務づけることができない国であれば、
言葉悪いのですが「適当に」亡くなったと診断されることもあるのかと・・・
そのため、周囲から亡くなったと判断された人が“生き返る”こともありえます。
では、日本はどうかといいますと、
どなたかが逝去された場合、
お医者様がそれを確認し、
死亡を証明する「死亡診断書(あるいは、死体検案書)」を発行します。
人の死亡を証明する重要な書類で
この書類がないと、火葬の許可が下りません。
そして、お医者様が死亡を判断するのが死の3兆候です。
呼吸が停止している
心臓が停止している
瞳孔が散大し対光反射がない
この3点の停止をもって死亡とみなすのが伝統的な判断の方法です。
ただし、日本のように国民皆保険制度で、
誰でも安価に医療を受けられる方が世界的には特殊です。
死亡に際し、医師による死亡診断書の作成を求めない国も多そうです。
そう考えると、
今日も世界のどこかで死者が蘇っているのかもしれませんね。
2.火葬中の死者蘇生を検証
次に、火葬中に息を吹き返すという日本の怖い都市伝説について。
いくつかの話しをピックアップして検証してみましょう。
ひとつ目のお話
火葬を終え、骨を取る作業に取り掛かろうとすると、
横向になっていた手が上の位置にありました
棺桶の上にはひっかき傷?みたいなのがあり、
生き返ったのかなと思いました
結構な騒動になりました
調べたところ、すごい刺激がかかれば稀に生き返る可能性があると言うのです
今回そういうことが実際にあったのですが、
本当に生き返ったのでしょうか?
↑
棺に引っかき傷がついていた点がゾッとするポイントです。
火葬中に蘇生し”熱い、熱い”と棺を掻きむしったということでしょうか・・・・
しかしながら実際は、棺桶は火葬中に燃えて無くなりますので、
引っかき傷を確認することはできません。
これを書いた方、
骨上げに立ち会ったことは無いなと、
葬儀屋さんならすぐに分かってしまいます。
もうひとつ都市伝説を紹介しますね。
そこの人に聞いたら、
10年に一回くらいの確率で火葬中に生き返る人がいるみたい。
あまりの高温に、ショックで生き返るんだってさ。
火力の調整室に焼き加減を見る小窓があるんだけど、
そこから覗くと、
中で生き返った人が暴れてるんだって。
そういう場合は、
途中で止めてもどうせ助からないからそのまま焼いちゃうんだって。
暫らくは、中から扉をドンドン叩くらしいけどね。
遺族に言っても嫌な思いさせるだけだから黙ってるっていってた。
↑
仮死状態の人が、火葬中の熱さのショックで蘇生するというお話ですね。
少なくとも私は火葬場の職員さんから、こういう話しは聞いたことがありません。
人の死亡確認がどのように行われるかは上記しました。
お医者様の死亡確認が間違うことはありませんが・・・
もし仮に、万が一に、その確認が間違っていたらどうなるのでしょうか?
実は、死亡確認の後、
火葬まで最低でも24時間は間をあけなくてはいけません。
これは「墓地、埋葬等に関する法律」で定められています。
この法律ができた1948年(昭和23年)ごろであれば、
24時間の間に蘇生する可能性があったのでしょう。
現在、その24時間の間に故人様をどのようにケアするかといいますと、
簡単にいうと冷却します。
これはご遺体が常に変化するためです。
硬直・緩解・顔色の変化などなど、
ご遺体は徐々に傷んでいきます。
腐敗が進みすぎると、最悪、お顔を見てお別れはできなくなります。
その腐敗進行を遅らせるために冷却を行う訳ですね。
具体的には、
ドライアイスを当てたり、
保冷庫という機械に中に納めたりします。
ドライアイスは-70℃ですので、
当てた部分の直下は凍ります。
それ位、強力に冷却させる必要があるということです。
あと、100%ではないですが、
臭気や体液漏れを防ぐため、
鼻や口を綿・ポリマーで塞ぐこともあります。
どうでしょう?
ドライアイスを当て、鼻・口に綿を詰めた状態で24時間安置したあと、
火葬のショックで生き返るということがありそうでしょうか??
もし天文学的な確率で生き返ってもらえるとしたら、
それは火葬の時ではなく、ドライアイスを当てられたショックで蘇生する、
その方がありえそうだと個人的には思います。
3.まとめ
生きたまま火葬されることはありえるのか?
【結論】
死亡確認が厳格でない国でなら可能性はあるが、
日本ではありえない
一刀両断ですね・・・
すみません(^_^;)
「生き返り」のお話しは、
怖いところもありますが、
希望やロマンを感じる方もおられると思います。
今回、調べる中でこんな書き込みがありました。
「火葬場とは生き返る可能性が少しでもある人を完全に殺してしまう場所ですか?」
「火葬なんてする必要あるのでしょうか?そのまま置いておき生き返るのを待つという選択肢はないのでしょうか?」
「親しい人が生き返るかも」と信じる人ならば、当然このように考えると思います。
しかし、
生き返るのを待っている間に故人様がどんどん傷んできて、
ご遺族のショックが更に深くなることを、
葬儀社スタッフは知っています。
ならば故人様が安らかなうちにきちんとお別れして頂く、
と考えます。
そういう意味で「死」に対して葬儀屋さんはリアリストです。
とはいえ、
ご葬儀の最後、お棺のフタを閉めるときはいつも複雑な気分ですが・・・。
以上、検証を終わります。
よく考えたら全部当たり前のことなのです。
ただ、知らないと不安になる事柄なので、
長文になってしまいました。
他にも「葬儀・火葬のあと、死者が帰ってきた」というミステリーな話もあったのですが、
これはまたいつか、ご要望があれば検証してみます。
最後までお読みいただき有難うございましたm(_ _)m